ヴィンテージ家具販売員がこっそり教える「中古デザインプロダクトの見つけ方!」

物件選びと同じ位に大切にしたいのが家具選びです。これからの長い時間を一緒に過ごす家具たちは、見た目や使い勝手といった機能面はもちろん、10年先も愛着を感じていられるものがいい。できれば、ヴィンテージ家具へと経年変化を楽しめ、価値ある資産として保有したい。そして将来的に購入した額と同じ位の金額とは言わないけど、売却できるものがいい。今回とくにヴィンテージ家具販売員がお勧めするのは、シンプルでモダンなヴィンテージ家具たちです。時が流れても色褪せることのない家具たちは、いつしか作品と呼ばれヴィンテージ市場では高く評価をされるようになりました、それらは日本の住環境ともよく似合います。その魅力についてご紹介します。

私は幼少の頃からデザインプロダクトが大好きで、2012年よりインターネットを通じて世界中の方にヴィンテージ家具を販売しています。Helveticaの店主です。

たとえば、もしあなたが上京や就職で初めての1人暮らしをするためにお部屋を探し、次に家具を探すことになったとします。それから先の長い人生で、同棲をしたり、結婚や家族が増えたり、帰郷することだってあると思います。転職や転勤で、住まいが変わることだってあるでしょう。

その都度、家具を総入れ替えできれば、ドラマに登場する空間のようにお洒落な生活を演出することができると思いますが、現実は、そのたびにモノを整理したり、処分だってすると思います。私が考える家具選びの基本は、折角身銭を切って購入してきた大切ものたちですから、将来的に二束三文にならないことを前提に、時が経つことでより輝きを増すであろう家具選びです。

まずは椅子選びから始めると、順序立てて決めることが可能です

中古家具を買う際は、是非とも書籍や雑誌でも構いません。こんな空間で生活をしてみたいなぁ。この椅子美しいなぁ。このテーブルだと友人を招いても使えそうな大きさだ!書斎で愛用するから、とにかく見た目。そして長時間腰をかけ居られる。など、どのシーンで使用する家具なのかを、自分なりで構わないので、熟考されるといよいと思います。もちろん、ぼんやりしたイメージだけでも最初はOKです。

愛用したいシーンや空間が決まれば、まずは椅子選びから始めると、順序立てて決めることが可能だと考えています。

「自分がその空間に求める要素は何ですか?お仕事向けですか?食事をする部屋ですか?」

その空間には、座椅子、座布団、何もなし、それともダイニングチェア、ロッキングチェア、オフィスチェア・ワークチェア、ラウンジチェア、シェーズロング、スツールにベンチ。どのような種類の椅子が合うでしょうか?考えるとまだまだ出てきそうですね。

次は、その椅子に腰掛けたときにお茶でも置きたいなぁと考えたら、次に選ぶべきは、テーブルです。

座卓、サイドテーブル、エクステンションテーブル、コンソールテーブル。想像するだけでも楽しくなってきます。

そして照明。あかりを決めましょう。シーリング、ペンダント、スポットライト、シャンデリア、シーリングファン、スタンドライト、ダウンライト。椅子→テーブル→照明。ここまででも生活空間が更にイメージし易くなります。

「家具選びの基本」テーブルと椅子のちょうどいい高さについて

みなさんはレストランで食事を行う際に、「食事がし易いなぁ」「ちょっと食事がしにくいなぁ」と感じたことがありませんか?

その原因のひとつに、テーブルと椅子の高さが合っていないことが関係していることがあります。

テーブルが高いのに椅子が低かったり、逆に椅子がテーブルに対して高くて座り心地が悪いときがあります。

もちろん個人の好みもあると思いますが、より心地のよい食事の時間を過ごすための、ちょうどいいテーブルとチェアの高さについて記載します。

【基本】テーブルの天板までの高さと、椅子の座面までの高さの差を「差尺」といいます。

普段気に留めることもない、テーブルと椅子ですが、実は使いやすい差尺は決まっています。

食事をする際に、食べやすい姿勢になる差尺の目安になる計算式「座高÷3-2cm」というものがあります。

私の尊敬するインテリアデザイナーの今村三枝子さんのお話によると、差尺は25cm~30cm程度がよいそうです。

それから私も自分好みの差尺を調べてみましたところ、25cmという結果でした。計算式だと27cmになるのですが。好みの問題ですね。笑

細かく計算しても実際に気に入った、椅子とテーブルのサイズを合わせることは、難しいと思いますし、ご家族の身長もバラバラですので、ご参考までに!

テーブルと椅子をちょうどいい高さにする方法について

私の場合は、大切な家具選びは機能面よりも見た目の美しさを優先するので、慣れるまで辛抱します。苦笑

そうは言っても、使い辛いとストレスになるもの。ヴィンテージ家具コレクターの中には、思い切ってテーブルや椅子の脚をカットしたりされる方もいます。なかなか勇気のいる行動だと思います。

4本脚をグラつきなく合わせるのは、結構難しいですので、脚をカットをされる場合は、購入先または信頼の置ける職人さんに相談されてください。

数センチを継ぎ足す場合は、ホームセンターなどで販売している脚に貼るフェルトと木工用のボンドを活用されると便利です。使用しているとヘタってくるので、都度交換作業が必要になります。

お気に入りの椅子を愛用したい場合は、テーブルはオーダーするという選択もあります。その際は、お好みの差尺を伝えることをお忘れなくお願いします。

中古家具はどこで買うべき?

そして具体的にどのお店で購入した方がいいのかな、という問題です。私はヴィンテージ家具を専門に販売してきた手前、その視点で話を続けていきたいと思います。好きなデザイナーや作家がいる場合は、新品で売られている店舗をインターネットで検索することになると思います。家具は安くない買い物ですから、中古品でも良いので安く手に入らないかなぁ。いつもの私は考えます。30年経た時点でヴィンテージと表現されることを踏まえて考えたときに、新品よりも安価に売られている中古品は、ヴィンテージ品になるまでの期間が短く、そして新品でもヴィンテージでもない、あくまでも中古品としての価値ですので、安価に手に入る可能性が高いと考えるからです。

1番よい選び方は現物を確認できる実店舗を構えられているお店に行って、店員さんに相談しながら決められることだと考えます。椅子だったら、自分に合ったサイズなのか、靴を脱いで確かめたり、グラつきがないのか、メンテナンスは行き届いているのか、万が一不要になった際のアドバイスをもらえるかもしれません。

2018年末からは、買い戻しを前提に商売をされている店舗もあります。終戦から高度成長期は、世の中に物も行き渡っていなかったことを考えると、今は逆に物に溢れ、しかしお給料が横ばいの状況です、このご時世、簡単には家具が売れなくなっていることも予想しています。

また、実店舗にメンテナンススタッフがいるケースも最近では増えてきましたが、職人さんの腕は確かなのか、椅子やソファを張り替える際の生地選びは適正なのかなどを確認する必要があると思います。

北欧のヴィンテージ家具でも生地選びを誤ると、張り替え技術の高い職人さんが仕事をしても、10年と持たずに、また張り替え時期が来る場合がよくありますし目にします。デンマークのフリッツハンセン社や国内の一部のメーカーは、クヴァドラ社の生地を用いています。それは、風合いや色味がよいという理由以外に、丈夫だからという点もあるからです。

購入する店舗次第でその是非が決まると言っても過言ではありません。

しかし、ヴィンテージ家具の価値を考えたときに、その将来性を勘案した場合、メンテナンスやリペアをしている作品の評価が高いのかと問われれば、何も手を加えていないものの方がオリジナルとしての資料性という点も含めて、価値が高い場合もあります。

利用のシーンや、目的が大切だと考えます。適切なメンテナンスをされる家具店が是の場合もあれば、非の場合もあるというわけです。

そこで、まずは良い中古家具屋を見極める方法からお話します。

将来的な資産価値を求めて購入を検討する場合は、ギャラリーと呼ばれるお店へ

年々家具店が減っている中で、世界中でモダン・ポストモダンのヴィンテージ家具市場が発展していく中で、ギャラリーとして日本から世界の顧客や美術館へ向けて販売を行なっているお店があります。どちらかといえば、絵画や写真を取り扱う、画廊に近い存在で、ギャラリーと名乗っている印象です。

彼らの仕事は、まさしくプロダクトとしての家具をアートに近しい文脈で整理し販売を行なっています。歴史的な背景やヒストリーを、過去の資料や製作者、デザイナーや関係者と会って知識を高めている方が多いのも印象的です。リペアに対しての考え方も、中古家具店と異なっているため、実際に足を運んでオーナーに直接、考え方を伺うと良い勉強にもなると思います。

日常使用を目的に、将来的には購入金額とは言わないけど、リセールを考えたい方は、リサイクル店や中古家具店へ

最近では業務用リサイクル店や、ハードオフさんに代表される大手リサイクルチェーンでも中古家具を見かける機会が増えてきました。ヴィンテージ家具に対する造詣が決して高くはありませんが、物を集める能力の高さや集客力は、流石のひとことです。お目当ての品があるかは、時の運次第ですが、気にかけて足を運んでみることも楽しいものです。

そして、もちろん忘れてはいけない存在が、中古家具店です。その専門性や知識と中古家具選びまで、実績もありますので、ライフスタイルに合う、お目当ての家具作品を見つけてもらったり、また、提案を受けてみることもお勧めいたします。餅は餅屋。大切な存在だと思います。

ヤフオクやメルカリをはじめとする個人間取引について

これは私の意見ですが、ある程度の知識や欲しい作品が定まったら、ヤフオクやメルカリで家具を探すことも大賛成です。購入することができれば、売却することも同時にハードルが下がると考えますので、ぜひとも活用してはいかがでしょうか。

写真では伝わらない痛みや傷がないか。リペアや補修作業の有無。想像していたものと色味が異なっている、グラつきがあるなどのトラブルを避けるためにも、できる限り事前に質問などされてください。自己責任の度合いも高いですが、安価で購入できると思います。

リペアや補修作業を本当に自社で行なっているのか、それとも外注に依頼しているのか

自社でリペアや補修作業をされている会社も増えてきました。一部では外注に丸投げをされる場合もあります。どちらが良い悪いという話ではありませんが、リペアや修理を売りにされているお店は、ウェブサイトやSNSで、修理前そして修理後。その途中の過程も公開されているケースが多いように思います。何よりもお客様の視点にたち、誠実に対応してくれるかを感じながら、どのお店から購入されるかの指針にされる必要があると思います。

家具も長い付き合いになりますが、販売店とも長い付き合いになりますから、大切なことは何よりも気持ちや接客です。

インテリアコーディーネーターに依頼をする

これも最近、家具選びには正解だと考えるようになりました。住空間の動線や使い方を考えた時に、壁紙、カーテン、床。全てをトータルに考えた知見に基づいて、丁寧に提案をされると思います。多くのコーディネーターがいますので、信頼できる方と出会いがあれば幸せものです。コーディネートのデザイン費用も発生すると思いますが、私なら喜んで相談しそうです。この考え方もあると参考にしていただければと思います。

日頃の食材選びと違い、家具選びで注意したいこと

日常の食材選びは、毎日の買い物をするものですので、旬なものや新鮮なもの、皆さまも目利きのプロになっている場合もあると思います。反面、今日も明日も明後日も、新しい椅子を買いにいくぞ!そんな意気込みの人は早々いません。買う頻度が高くなると、失敗する経験も多くあり、目利きになっていくのですが、家具は人生に何度買うでしょうか。なので、どんなシーンで使用したいのかの想像力や、親身になって相談に乗ってくれる販売店との出会いは大切にされると良いと思います。

販売員がお客様の顔を見ずにノルマがあるから、たくさん売りたい!と考えているわけではなく、お客様の幸せや購入後のメンテナンスだったり、末永いお付き合いも考えながら接客されている方もいます。

この記事が少しでも家具選びの参考になればと願い、私が考えられることを記事にまとめました。

家具との出会いも一期一会です。どうか素敵な出会いがありますように!